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不透明な男

第8章 序章


そんなこんなで松兄ぃの家が近付いた頃には、もう22時になっていた。


兄「智」


もうすぐでマンションだという所で松兄ぃに声を掛けられた。


智「松兄ぃ…、おかえり♪」

兄「今帰ってきたのか?」

智「や、コンビニ行こかなと」

兄「メシまだなのか?」

智「うん、忘れてた(笑)」


バカかお前は、何やってんだほら行くぞ、と首根っこを掴まれタクシーに放り込まれた。


兄「さあ食え」

智「……」

兄「なんだ?」

智「松兄ぃってほんと、強引だよね」

兄「あぁ?俺はお前を心配して…、はあぁぁ、早く食え!」

智「いただきます(笑)」


ったく、なんだってこんな時間まで食ってないんだと説教をされながら遅い晩御飯を食べる。

松兄ぃはつまみをつつきながら晩酌していた。


智「ねえ松兄ぃ」

兄「ん?」

智「おれ、そろそろ松兄ぃの家出るよ」


飯も食べ終わり、俺も本格的に晩酌に入っていた。

自分の家が見付かってからずっと思っていた。
だけど、なかなか言い出せずにいた。


兄「え…」

智「家がね、見つかったんだ」


俺は松兄ぃの顔を見られなかった。
きっと、寂しそうな顔をしている。



その顔を見たくなくて、今まで言えなかったんだ。




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