
不透明な男
第8章 序章
警護係ってなんだ…
ボディーガードか?
それにしてもわからない。一体誰の名刺なんだと頭を悩ませる。
頭が痛い。もやもやする。
何か、大事な事を忘れている。
もう少しなんだ、あともう少しで思い出せそうなんだ。
何か、何か無いのか?
俺は焦る。
出そうなのに出ない。
こんなに気持ち悪い事は無い。
ふぅ…
もっかい、絵、見るか…
俺は、あの気持ち悪い渦の前で写真と名刺を並べあぐらをかく。
写真を見る。絵を見る。名刺を見る。
それを延々繰り返す。
もやもやしたまま、俺の頭だけがズキズキと痛む。
…なんでこんな絵を描いたんだ
何があったんだよ… 教えてくれよ…
このままじゃラチが開かないと立ち上がり、クローゼットに向かう。
他に何か無いかともう一度良く見る。
…やはり普通のクローゼットだ。
普通の青年の洋服に、スーツが何着かある。それだけだった。
はあ、取り合えず自分には入院中の母親が居るんだな。どうやって探そうかとクローゼットを閉めかけたその時、奥の方に置かれた紙袋に目が留まった。
古そうな袋だな…
手触り的には洋服が入ってるような感じがした。
まあ、クローゼットだから当然のものだなと、取り合えず中身を出してみた。
智「…わっ!」
思わず声が出た。
広げたその洋服は所々破れており、褐色になったいくつもの斑点が付いていた。
…え
これ、血?
まさかね…
