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不透明な男

第8章 序章


外はすっかり日も暮れていた。

なんだか秘密が詰まっていそうな封筒を松兄ぃの家に持ち帰る訳にもいかず、取り合えず自宅に立ち寄る事にした。



まだ3度目か…

早く自分の家に慣れなきゃな…



そう思いながら自宅に入る。
そういえば、まだ殆ど探索していなかった事に気付いた。



松兄ぃ仕事遅いし…

ちょっと探索して行こうかな…



封筒を開ける事を少し躊躇っていた俺は、言い訳を付けて開封を後回しにした。

…とは言っても、所詮青年の独り暮らし。
大して広くもないこの部屋はそれほど探索する場所も無かった。



リビングも寝室も見たし…

後はあの部屋だけか



俺は、未だ足を踏み入れた事の無い部屋へ入った。




カチャ…


わ…

なんだ…?



その部屋には所畝ましと絵画が置かれていた。

そういえば絵を描いていたと潤が言っていたなと思い出した。



これ、おれが描いたのかな…



風景画や人物画、大小様々な絵が重ねるように立て掛けられていた。

暫くその絵に見入っていると、部屋の隅に乱雑に置かれた絵が目に入ってきた。



こっちの絵達も俺のなのかな?

なんか急に雑な置き方になってるけど…



気になった俺はその絵を手に取った。



…!



そこに雑に放置されていた数枚の絵は、先程見た絵とは感じが全く違っていた。

紅く、青く、暗く、鮮やかな色ではないどろどろした様な色だった。



なんだこれ… きもちわるい…



後ずさる俺にイーゼルがぶつかる。

ガタッと音を立てたイーゼルから一枚の絵が落ちた。



その絵は、深夜の暗い海の様な、底の見えない沼の様な、なんとも気持ち悪い渦が描かれていた。




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