
不透明な男
第8章 序章
智「あ、いっこ思い出した♪」
東「なんだ?」
智「おれ、封筒預けてなかった?」
東「ああ、預かってる」
そう言うと、先生は金庫から茶封筒を取り出した。
東「よく思い出せたな。はい、これ」
智「ふふ、ありがと♪」
封筒に何が入ってるかは俺も知らない。
多分、俺が用意したものなんだろうが、さっぱり忘れている。
智「おれ、何いれたんだろ」
東「きっと大事なものなんだろう。俺に、ぜっっっったい開けるなよっ!って言ってたから」
智「そなの?」
東「それに、俺からは渡すなって」
智「へ?今先生から受け取ったけど」
東「…そうでなくて(笑) お前… 本当力抜けるよ(笑)」
先生は、心配するのがバカらしくなってくる、と笑いながら話を続ける。
東「お前が自分から切り出すまでは、封筒は見せるなと言われてたんだ」
智「おれが言ったの…?」
東「お前は何を入れたんだろうな…」
智「うん…」
帰ってひとりで見てみるよ、と伝え帰ろうとした俺を先生は引き留める。
東「寝られないんだろ?…薬、持ってくか?」
智「や、今はいいや。まだそんな辛くないし…」
辛くなったらまた来るよと伝え、俺は東山先生の元を後にした。
一体何を入れたんだろう
俺にとって、良いものなのか悪いものなのか…
封筒を握りしめる俺の手は、少し震えていた。
