
不透明な男
第8章 序章
やめて…
その人を離して…!
智「あ…?」
東「起きたか」
あれ…
何がもう少しだったんだっけ…
俺はくたびれたソファーで目を覚ました。
東「何か…夢でも見てたのか? 苦しそうにしてたが…」
智「え… 夢? あ、あぁ…何か見た気もするけど…」
東「覚えてないのか(笑)」
智「ん(笑)」
苦しんでたのなら、どうせいつものヘンな夢なんだろと気に留めなかった。
覚えてないのなら逆に良かったと、それくらいの気持ちだった。
智「…なんだよ、も~。 早いよ、もうちょっと待ってくれれば良かったのに」
東「ん?」
智「注射!もうちょっとで何か思い出せそうだったんだよ。なのにさ~、寝ちゃったから忘れちゃったじゃんか~」
んも~もやもやするう~、と頭を抱える俺を東山先生は笑う。
東「いつも注射が嫌で暴れるから、不意討ちしたんだよ(笑)」
智「え、そうなの…」
東「お陰で寝れたんだから感謝しろ」
智「あ、ありがとうござ…」
って話変わってねえか?と我に帰る。
智「なんだったんだろうな… もう少し、もう少しでって思ってたのはわかるんだけど…」
東「もう少し?」
智「ん。けど、何がもう少しなのか、肝心なとこがわかんないんだよ(笑)」
東「意味無いな(笑)」
智「ほんとバカだな、おれ…」
はあ、自分が情けねえやと肩を落とす俺を、東山先生は優しく見守っていてくれた。
……あ!
いっこ思い出した!!
俺は、あまり意味の無い様な用件を思い出した。
