
不透明な男
第8章 序章
俺の中に衝撃が走った。
俺が記憶を失ったのは8年前だけでは無いと言う。
東「お前は、3年前にも記憶を無くしてる」
智「え…?」
俺は1度ならず2度までも、いや、3度も記憶を失くしている。
この事実は只の衝撃では納まらない。
激震が走った。
智「うそ…」
東「大野、気をしっかり持て」
智「え、なんで… 何かの、病気…?」
東「いや、そういう事では無さそうだ」
18歳の時、病院で詳しく検査したが悪い所は見当たらなかったと言う。
3年前に違う病院に運ばれた時も結果は同じだったらしい。
東「精神的なものとしか説明が付かない」
智「……」
東「今回も病院に行ったんだろ?検査したのか?」
智「どこも悪く無いって…」
東「そうか…」
東山先生は1点を見つめながらふうっと深い溜め息をついた。
智「精神的なものってどういう事…?なんで、なんで忘れちゃうの?」
東「最初に記憶をなくした原因となる出来事が分からないんだ」
智「おれ、覚えて無かったの…?」
東「ああ。…だが、多分それを思い出しそうな所まで行くんだろう。お前の様子が変わってきたなと思ったら、…また、忘れたんだ。それが3年前だ。」
俺は一体何を思い出しかけたんだ?
思い出そうとする度に失われる記憶。
俺にとってその記憶とは、封印しないといけない様なものなのか…?
