
ツインテールの君
第1章 聖夜の宴のデザートは?
「実は……」
「…………」
「実はあたし、二十三歳なの……」
「…………」
「…………」
「…………」
「…──え?」
部屋に、言い知れぬ空気が流れ出した。
それのどこが秘密にしている過去なのか。
一同がきょとんとする中、アリスだけが真剣だ。否、イオリの顔つきも神妙だ。
「そっか」
「國佳、分かったの?」
「お客様名簿に、そう言えば十九歳って書いてあったなと」
「…………」
「ごめんなさい!歳下って可愛いなっと思って……」
遡ること一年前、アリスは両親と深刻な仲違いをして実家を飛び出した。路頭に迷い、森の麓で毛布にくるまり泣いていたところでイオリに出逢い、家に付いていったらしい。
二人が恋仲になるまでに、さして時間はかからなかった。アリスは一人暮らしを始めたばかりのイオリの厄介になることになり、以来、苗字も彼女のものを名乗っている。
そこで一つだけ、アリスはイオリに偽っていた。
ずっと、歳上の恋人を持つことに憧れていた。そのために初恋の相手が同い年と分かった瞬間、アリスはこの至極単純な嘘を思いついたのだ。
「次はイオリさん」
「あ、はい?」
「罰ゲーム、中身はご覧になりましたか?」
今度はイオリに決まり悪そうな顔色が滲んだ。
