
ツインテールの君
第1章 聖夜の宴のデザートは?
最近、貴女が最後にした愛の告白を、一位獲得者を相手に再現せよ。
それが、イオリのプレゼントボックスから出てきた罰ゲームの指示だった。
「やるの?」
せりはがイオリをすみれの前に押し出した。
ちなみにこの項目は、恋愛経験がない場合、今後予定するシチュエーションに差し替えることになっていた。
「アリスさんが告白されたなら、彼女にバトンタッチは可能です」
「あたしじゃないー」
「…………」
「…………」
数秒の沈黙の後、とうとうイオリがすみれに距離を詰めた。
「えっと……造花……造花、ないから、これでいっか」
イオリがすみれの髪に挿さっていたフェイクファーのリボンを抜いた。
眠って、と、マシュマロのような耳朶に、イオリの唇がささめく。
暗示をかけられでもしたように、すみれが畳に横たわった。
仮初めの恋人の髪から抜いた、フェイクファーの白いリボンに、イオリがそっとキスをした。
愛おしそうに、切なげに──。
「君は、私の……運命……」
優しげで柔らかなイオリの声が、しんとした甘酸っぱい部屋の空気に、しゃらんと伝った。
イオリのたわやかな腕が、横たわったすみれのうなじと腰に添う。
淡いピンク色の眠り姫の身体が浮いた。
「お姫様抱っこー?!」
絶叫したせりはの隣で、國佳は開いた口が塞がらない。
「綺麗だ、とても……綺麗……」
アリス。
聞き知った名前をこぼした唇が、すみれの首筋に近づいていく。
國佳がちらとアリスを見遣ると、彼女は、涙目になって頬を染めていた。
