
ツインテールの君
第1章 聖夜の宴のデザートは?
* * * * * * *
聖夜には奇跡が起きるという。
國佳は、今まさに奇跡に直面していた。
クリスマスパーティーもお開きになり、國佳はせりはに勧められて、温泉に行った。
帰りがけ、うっかり部屋を間違えて、アリスとイオリのいる客室のドアを開けた。
そこまでは別段、ただの事故だ。
そのただの事故の中で、國佳は奇跡にまみえたのである。
「イオリ。本当に気にならないの?嘘言ったこと」
「嘘?」
「あたし本当は二十三年生きてる。なのにイオリと出逢った頃、十八歳だって言ってたでしょ。ごめん」
「またその話か。仕方ないじゃん。私も信じきっていたんだし」
「でも」
「私に付いてきたいって、思ってくれたからでしょ。アリスにあの時、……あんなことした私に」
「イオリ」
衣擦れの音がした。
暗がりでよく見えない。見えないなりに、國佳には、アリスの人差し指がイオリの唇に触れたのが分かった。
常の國佳なら、ここでドアを閉めている。
覗き見はいけない。まして他人の閨事を覗くなど、人間としてあるまじき行為だ。
だのに、足が動かない。
「はっ、ぁ、アリス……ダメ、今夜は……あぁぁっ」
「イオリ可愛い。ねぇ、ここ弱いでしょ。こんな風にしたら気持ち良い?」
「あっ、あぁっ……あ、ちょっと待って……滅茶滅──…あぁぁっっ、……」
貴女達が滅茶苦茶だ。
自分の過失を棚に上げ、國佳は得体の知れない顫えを悪態ではぐらかせる。
