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ツインテールの君

第1章 聖夜の宴のデザートは?


* * * * * * *

 今となっては直接的な原因も思い出せない。とるに足りない確執だった。


 アリスの両親は、典型的な古めかしい人間だ。


 イオリと出逢ったあの日の夕まぐれも、クローゼットに詰め込んであった大量の洋服か髪の色かにとやかく言われ、口論に発展したのではなかったか。


 厳選した洋服と、眠るための毛布。

 それだけをトランクに詰めて、電車で二時間かかる土地に逃げた。見知らぬ街を歩いて歩いて、迷った果てに、行き着いたのが森の麓だ。


 毛布にくるまって目を閉じた。

 微睡みの中で、ふっと、優しい香りが鼻を掠めた。


 その後は、さっきイオリがすみれに再現した通りだ。



 ただし、続きがある。


『あのね、あたし恋ってよく分からなくて。でも貴女のことは──』


 厳格な両親の監視下では、友人と遊びに出るのにも一苦労した。恋など夢のまた夢だった。

 アリスは久しく明るい部屋で、イオリにそれまでの全てを打ち明けようと、馳走になった紅茶で喉を潤した。


 まさか、桃と薔薇のフレーバーに催淫剤が混入していようとは、夢にも思っていなかった。

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