
素晴らしき世界
第31章 向かい合わせ
「好き…だ」
初めて口にする言葉は震えていて……
緊張で手に持っていた離婚届を
クシャリと握りつぶしていた。
「…えっ?」
雅紀は腕を突っ張って俺から離れる。
そうだよな。
嫌いなヤツに言われたって気持ち悪いだけだもんな。
でも雅紀はずっと俺に言い続けて来たんだ。
どんなに俺に想いが届かなくったって……
「好きだよ、雅紀」
状況が把握できず揺れる雅紀の瞳に
自分を映し出すように顔を上げて伝えた。
「俺さ、ある人とたまたま知り合ってさ。
松本和也くん……覚えてる?」
雅紀は少し考える仕草を見せると、
思い出したのかコクリと頷いた。
「実はさ、潤……あっ、和也くんのパートナ。
上手くいってないってのは聞いててさ」
俺の言葉に何かを察した雅紀が視線を落とす。
「知り合った日にさ……食事に誘ったんだ」
「別に言わなくていいよ。想像つくし。
わざわざ言わなきゃいけない事?」
顔を上げた雅紀はクッと唇を噛みしめ、
俺の事を潤んだ瞳で睨みつけている。
嫌いであってもまだ俺は雅紀のパートナー。
そりゃ、プライドが許さないよな……
「雅紀が想像したことを……
もしかしたしようとしてたかもしれない」
「したかもって……そんな曖昧な」
「抱きしめた、抱きしめたけど……」
俺は雅紀を再び抱きしめた。
「離せっ…離せよっ!」
今度はさっきと違って俺の腕から逃れようとももがくけど、力をさらに込めて逃さないようにした。
「違うって!違うって……思ったんだ」
俺の言葉に雅紀がピタッと動きを止めた。
「寂しさを埋めようとした事実は認める。
それはきっと和也くんも同じだったと思う。
でも俺も和也くんもその時に気がついた。
それを埋めてくれるのはお互いじゃないって」
ゆっくり身体を離すと、
俺は立ち尽くす雅紀の頬を手で包んだ。
「雅紀なんだ。俺には雅紀しか……」
俺の言葉と同時に
包んだ手に零れ落ちて来た涙が当たった。
初めて口にする言葉は震えていて……
緊張で手に持っていた離婚届を
クシャリと握りつぶしていた。
「…えっ?」
雅紀は腕を突っ張って俺から離れる。
そうだよな。
嫌いなヤツに言われたって気持ち悪いだけだもんな。
でも雅紀はずっと俺に言い続けて来たんだ。
どんなに俺に想いが届かなくったって……
「好きだよ、雅紀」
状況が把握できず揺れる雅紀の瞳に
自分を映し出すように顔を上げて伝えた。
「俺さ、ある人とたまたま知り合ってさ。
松本和也くん……覚えてる?」
雅紀は少し考える仕草を見せると、
思い出したのかコクリと頷いた。
「実はさ、潤……あっ、和也くんのパートナ。
上手くいってないってのは聞いててさ」
俺の言葉に何かを察した雅紀が視線を落とす。
「知り合った日にさ……食事に誘ったんだ」
「別に言わなくていいよ。想像つくし。
わざわざ言わなきゃいけない事?」
顔を上げた雅紀はクッと唇を噛みしめ、
俺の事を潤んだ瞳で睨みつけている。
嫌いであってもまだ俺は雅紀のパートナー。
そりゃ、プライドが許さないよな……
「雅紀が想像したことを……
もしかしたしようとしてたかもしれない」
「したかもって……そんな曖昧な」
「抱きしめた、抱きしめたけど……」
俺は雅紀を再び抱きしめた。
「離せっ…離せよっ!」
今度はさっきと違って俺の腕から逃れようとももがくけど、力をさらに込めて逃さないようにした。
「違うって!違うって……思ったんだ」
俺の言葉に雅紀がピタッと動きを止めた。
「寂しさを埋めようとした事実は認める。
それはきっと和也くんも同じだったと思う。
でも俺も和也くんもその時に気がついた。
それを埋めてくれるのはお互いじゃないって」
ゆっくり身体を離すと、
俺は立ち尽くす雅紀の頬を手で包んだ。
「雅紀なんだ。俺には雅紀しか……」
俺の言葉と同時に
包んだ手に零れ落ちて来た涙が当たった。
