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虹色の精霊に導かれて…

第10章 羽と尾と鼻と目と耳

櫻井視点

俺の目の前に、俺と同じ背丈で古風な衣装を来た男性が立っている。


 同じ顔の人なんて、あり得ない…

 声だって…ちょっと、父さんみたいな感じもした…


桃『見つめられると、さすがに、照れるな…』
 微笑む桃木。


「えっと…整理していいですか?」


桃『構わないが…』


「それじゃ…」


{この人はね。
『桃木 祥太郎』(もものき の しょうたろう)様
毛野(けぬ)国の土地主の息子さんよ}
 いきなり、桔梗が現れ、ベラベラ説明する。

{で、王子の前世のお一人よ}
 俺の額に一蹴りしてきた。

≪わ!危ないな…≫


桃『はは、放埒(はうらつ)した精霊様だ』
 桃木はお腹のあたりをポンポン叩きながら笑っている。


「桃木さんは、お…僕が後世って言うのは、ご存じで…」


桃『そう固くならなくても…よい。同じ魂の<先>と<後>なのだから』


「先と後…」


その言葉の意図が分からなかったので、聞き返そうとした時、

部屋に‘輝く扉’が現れる

(あ…来た…桃木さんともう少し…)


頭の中に智くんの笑顔が浮かぶ。


(そうだ…今は、智くんの所にいきなきゃ…)

体を扉の方に向ける。



桃『翔。そなたは良い男だ』
 桃木さんが俺をキツク抱きしめる。


(え!)
いきなりだったから、固まる俺。

桃『これからも、悟をよろしくね…』

 桃木がそう言葉にすると、目の前から消える。


(どこ行ったんだ?)
見回すが、声も気配も感じなくなった。



扉から聖服を着た使者が現れ{お迎えに参りました}と深々と頭を下げている。


俺は、布団の上に座る。



{王子♬}
 桔梗の精霊が肩に乗る。


立ち上がると、布団の上に座る自分を寝かす。



{では、参りましょ…}


使者に誘導されながら扉をくぐる。



扉の向こうには、太陽が燦々と降り注ぐ庭に出た。

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