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(仮)執事物語

第9章 STEP×STEP〔※杜若〕


「え? ちょっと、莉玖!?」

あたしは半ば莉玖に引き摺られる様に、彼の後に続くと、莉玖は少しだけ怒った様な声で『休憩は終わり』と言って、歩く速度を速める。

「お、おい!リク!?」

慌てた様なマコ兄の声が、あたし達の背中を追いかけて来るが、莉玖の足が止まる事はなかった。

「先に行く」

短くマコ兄に言葉を返すと、莉玖はあたしの腕を引き、そのまま先を急ぐ。呆気に取られた綾芽先輩とマコ兄を残して。

ひょっとして……。

また、ヤキモチ!?

マコ兄とじゃれ合うところなんて、何度も見ている筈なのに。今まで、何も言わなかったのに。

無言で先を歩く、莉玖の耳を見れば、そこは赤く染まっていて。それが何だか嬉しくて。

あたしの顔には、自然に笑みが浮かぶ。あたしは小走りで莉玖の隣に並ぶと、彼の腕に自分の腕を絡めた。

「あたしは、莉玖しか見てないよ?」

そう言って顔を覗きこめば、赤く染まった莉玖の顔。彼は繋いでいない方の手で、口元を抑えると、あたしから視線を外す。

何かを堪える様に、ギュッと目を瞑って。

「莉玖?」

私が廻り込んで彼の顔を覗くと、莉玖は大きな溜息を一つ吐いて、『行くぞ』と言って走り出した。

「えっ? ええ~!?」

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