テキストサイズ

(仮)執事物語

第9章 STEP×STEP〔※杜若〕


莉玖は表通りに出ると、人でごった返すお店へと入り、ハンガーに吊るされている服を数着、手に取った。

あたしは訳が分からないまま、店の奥の試着室へと連れて行かれ、押し込められる。

差し出された服を受け取り、試着をすればいいのかと納得し、扉を閉めようと手をレバーに掛けた。

すると莉玖が一緒になって試着室に入って来て、扉を閉める。

え? どういう事!?

あたしが呆気に取られていると、少し強引に莉玖に引き寄せられ、視界が遮られた。

「んん……っ!?」

何が起こっているのか、分からない。唯、唇には柔らかくて温かい感触。それが一旦離れると、莉玖が耳元で囁く。

「口……、開けて」

あたしは言われるままに、少し唇を開くと、再び温かい感触に包まれた。

歯の間から忍び込んで来た、熱い舌は余裕なくあたしの口の中で暴れる。

あたし……。

今、莉玖とキスしてる!?

それをあたしの脳が理解した瞬間、心臓が暴れ出した。

ここ、お店の中なのに。

外には人がいっぱい居るのに。

あたしの心臓の音が煩くて、店内の喧騒も耳に入って来なかった。

莉玖の両手が、逃れられない様にあたしの両頬を捉える。

あたしはどうしたらいいか分からなくて宙に浮かせたままの手を、恐る恐る莉玖の腰へと回した。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ