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(仮)執事物語

第9章 STEP×STEP〔※杜若〕


あたし達は、電車で渋谷まで出ると、あちこち寄り道をしながら、表参道まで歩く。

気になるお店を見つけては立ち寄り、疲れたらカフェに入ったり、ガードレールに腰を掛けてお喋りを楽しんだりした。

「はぁ──っ……。こんなの久し振り。すっごい楽しい!!」

表通りの喧騒から逃れて、裏路地のコンクリートの階段に腰を下ろした綾芽先輩が、そう言って笑う。

お嬢様としての生活はだいぶ慣れたと言っても、やはり21年も庶民の生活をしていたから、こういう気楽なのが楽しいのだと言う。

マナーとかしきたりとか、色々大変そうだもんね。

働いている人も礼儀正しく、ビシッとしているんだろうな。

高月さんなんか、厳しそうだし。

そう言えば、莉玖やマコ兄ってお邸で働いている時ってどんななんだろう?

「綾芽先輩?ちょっと訊いてもいいですか?」

あたしはマコ兄が買って来てくれた緑茶のペットボトルのキャップを回しながら、綾芽先輩の隣に腰を下ろす。

「何かな?」

先輩は温かいミルクティーのボトルを膝の上で両手に包み、にっこりと笑いながら小首を傾げた。

「莉玖とかマコ兄って、お邸で働いている時も、こんな感じなんですか?」

「あれ?ミーちゃんて、二人が働いている所は見た事ないの?」

綾芽先輩にそう返され、あたしはコクンと頷く。

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