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(仮)執事物語

第9章 STEP×STEP〔※杜若〕


心配させたい訳じゃないのに。

あたしが何も言えずに黙って俯くと、莉玖はポンポンと頭を撫でた。

「さっきはゴメン」

「え?」

莉玖の突然の謝罪の言葉に、驚いて顔を上げると、莉玖と視線がぶつかる。

「突然、抱き寄せて……。ミーが綾芽の事、うっとりした顔で見てるから……。ちょっと面白くなかった」

「え?」

莉玖の言葉にまた驚いたあたしは、まじまじと彼の顔を見てしまった。すると莉玖は少し顔を赤くして、そっぽを向く。

「あんま、見んな」

繋いでいない方の手の甲で、口元を隠す莉玖。ひょっとして、恥じらってるのかな?

そう感じた途端、あたしの胸がキュンと疼き、沈んでいた心が浮上し始めた。

『そんなんじゃない』と言ったのは、照れ隠しだったんだ。そう思ったら、ますます莉玖の事が愛おしく感じる。

そうだよね。素っ気ないのはいつもの事で。でもそれは、他の人が居るからで。

二人の時はいつだって、あたしだけを見てくれて、甘えさせてもくれて。

どんな事があっても、怒ったりせずに付き合ってくれる莉玖。

デートの意見を求めても、あたしに任せっきりで、不満もあったけれど。

それは莉玖の心が広いから。

あたしのしたいようにさせたいって思ってくれているからなんだよね。

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