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DAYS

第32章 オールリクエストshort story♡





翔くんの行きつけのお店は、
オシャレなんだけどどこか入りやすい
雰囲気のお店だった。


「いらっしゃいませ。

って、なーんだ。翔か。
真面目に挨拶して損した。」
「おい、俺も客だぞ、客。」


こんなフランクな翔くんを
初めて見た。

だからすぐに分かった。
きっとよっぽど仲のいい人だって。


置いてけぼりを食らって、
黙り込む俺に、翔くんは慌てた様子で


「あ、ごめん。
これ、幼なじみなんだ。」
「これってひどくない?

二宮です、こんばんは。」
「あ、松本です。」


可愛い感じの人だなって思った。


それと同時に、
幼なじみって肩書きが羨ましくなった。


俺ももし、翔くんの幼なじみだったら
今頃もっとこの距離は近かったのかなって。

でも、それも「もしも」の話。

二宮さんは幼なじみだけど、
俺はそうじゃない。


「でも珍しいね、
翔が誰かを連れてくるって。」
「うん。潤は特別だからさ。」
「ふーん…。」


『特別』

その言葉に一瞬だけドキっとしたけど、
すぐにその気持ちは冷めた。


何度も聞いてきたから。

その度に期待して、
その度に傷ついてきたから。


所詮、翔くんの中では
俺は友達以上にはなれないんだって
突きつけられているようで苦しい。


そんなことを、翔くんが
知る由もない。

知らないほうが俺もいい。


「で、なに食べる?」
「適当でいいよ。

とりあえず、ビールでいい?」
「あ、うん。ビールがいい。」


程なくして、ビールが運ばれてきて
乾杯をして、早々と喉へ流す。


醜い感情も、この苦しさも
全部を忘れ去るくらいに。

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