
DAYS
第32章 オールリクエストshort story♡
勉強なんてそっちのけで、
ケーキを食べてる雅紀。
「こら、勉強は?」
「あーとーでー。
…ねぇ、和。」
さっきまでは笑ってたのに、
急に真剣な顔をしてる。
その顔に、茶化せなくなるのはいつものこと。
「何だよ、早く勉強すんぞ。」
「今、彼女とかいないの?」
「は?何だよ、急に。」
深刻な内容だと思って、気を張ってた
俺がバカだった。
「そんなこと言ってないで、ほらー…」
「いる?彼女。」
どれだけ話を逸らそうとしても、
ずっとそればかりを聞いてくる。
真剣な顔つきで。
俺のほうをじっと見つめて。
俺、弱いんだよ、その瞳に。
いつもなら「いい加減にしろ」って
ちょっと怒っちゃえば、
「そうだよね、ごめんごめん。」
テキトーに笑って、勉強に手を
つけ始めるんだと思う。
それが正しいはず。
なのに、今日は俺も変みたいで。
何故か真剣に答えなきゃいけない
ような気がして。
目を逸らしちゃいけないような気がして。
「いないから…。」
「そうなの?」
あからさまに嬉しそうな顔をしてる。
…あぁ、もう。
そんな顔を見せられてしまったら、
どうしたらいいのか分からなくなる。
閉じ込めてた気持ちが
溢れてきそうになる。
だけど、ぐっと耐える。
頼むからこれ以上は何も言うなよって、
目で軽く合図をする。
そんなの雅紀に通じるはずがない。
「和、あの、俺さ…。」
聞きたくない。
だってそれはきっと、
ずっと俺が望んできた言葉だから。
雅紀の言葉を遮って、目を逸らして
耳を塞げばいいこと。
だけど、そんなこと出来ないよ。
ここで聞いたら、俺は…俺。
「好き、なんだ。」
心に掛けた鍵の開く音がした。
