
DAYS
第32章 オールリクエストshort story♡
N side
「今日、雅紀が来るから。」
「あら、まーくんが?
何か用意したほうがいいかしら。」
「いいよいいよ、そんなん。
そんなの気にする仲でもないじゃん。」
「でも、まーくんだしねぇ。」
家に帰って、母親に雅紀が来ることを
伝えれば、ケーキを買ってくると
止める間もなく家を飛び出してった。
母親は、雅紀のことを可愛く思ってる。
素直で爽やかな息子が出来たみたいだわ、
とかなんとか言っちゃってさ。
悪かったな。
ひねくれてて、爽やかじゃない息子で。
雅紀との約束の時間までは、
まだだいぶある。
「今頃は、走り込んでんだろうなぁ…。」
しまったなぁ、部活を少し覗きに
体育館の裏で見てから帰ればよかった。
そこは穴場で、普段はほとんど人が来ない。
雅紀をゆっくり見られる場所だ。
どんな雅紀も格好いいとは思うけど、
でもやっぱり1番はバスケをしてるところ。
汗なんて気にしないで、
ボールだけを追ってコートの中を
駆け回っている。
その度に、さらさらの髪が揺れて。
それを見る度に心臓が少しきゅっとなる。
少しだけ…だからな。
スリーを決めたあとの嬉しそうな顔も、
外した時の凹んでる顔も、
全部が特別に見える。
とにかく格好いい。
こんなの、雅紀に言ったら
凄く嬉しそうな顔をして
「ありがとう。」
なんていうんだろ?
太陽にも負けない笑顔で、
その勢いでハグもしてくるんだろ?
そんなの照れくさいから、
だから絶対に言わない。
「好き…なんだよなぁ。」
ポツリと口に出せば、
やっぱり心臓がうるさくて、苦しくて。
だけど、嫌じゃない。
自分の気持ちを知った時は
戸惑ったし、そんなことを考える自分が
嫌だった。
だけど、止められなかった。
雅紀を想うことも、
そばに居続けることも。
