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DAYS

第32章 オールリクエストshort story♡





いつもはあれだけ面倒くさい仕事も、
今日に限って早く終わってしまって。

同僚も、周りの先輩たちもそんな感じで
残業という手は使えなくなった。


定時には上がることが出来たけど、
どうしても腰が上がらないから、
急ぎでもない仕事にまで手をつけた。


チラッと和のデスクを見ると、
もう姿はなくて。

帰らなきゃ、和が来ちゃうんだから。


「お疲れ様でーす。」


一応フロア全てに聞こえる声で
挨拶をしてから、会社を出て駅へ向かう。


俺の家は、会社の最寄り駅から
一駅だけ離れたところ。

こんな便利なところでさえ、
今はただ憎らしい。


電車に揺られても、降りて駅から歩いても
気持ちは浮上しなくて。


『今から行くから。』


和から、そのメールを受け取ったのは
ちょうど玄関を開けた瞬間。


「あ、やっべ。」


急いで着替えて、軽く掃除をして。

ついでだからと軽くご飯も作った。

そういえば、俺もたぶん和も
昼飯食ってないから。
通りで腹が減るわけだ。


そろそろビールでも出しておこうと
冷蔵庫へ向かったとき、

インターホンがなる。


1つ深呼吸をして、
玄関へと急いだ。


「…いらっしゃい。」
「お邪魔します。

ごめん、俺手ぶらで来ちゃった。」
「あー、いいよ、大丈夫。
飯も作ったし、ビールも冷やしといた。」
「そっか、やった。」


そう言って笑う和は、
昼とは打って変わって優しくて。


だけど、ひどく悲しそうで。

それが、余計に俺を分からなくさせた。

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