
DAYS
第32章 オールリクエストshort story♡
S side
智は最近、難しい顔をすることが
多くなった。
きっと、余計なことを考えてるんだと思う。
原因が何なのか、はっきりとした確信は
ないけれど、でも何となく分かる気がする。
『結婚』
智は最近、この言葉に異常に
反応するようになっていた。
きっとこれだ。
俺の横で、小さく息を吐いてる智。
バレてないと思ってるんでしょ?
バレバレだよ?
何考えてるのかも。
智の考えてることなら何でも。
「ねぇ、智。」
「ん?」
俺の声に、一瞬ビクッとした。
慌てて作ったであろう笑顔は、
少し引きつっているように見えた。
「愛してる。」
「…え?」
「愛してるよ、智。」
不安なら、いつでも伝える。
いつでも、何回でも言うよ。
最近、めっきり言葉にしていなかった。
『好き』『愛してる』
もう言わなくても分かってくれてる、とか。
一緒にいればそんなのは伝わる、とか。
変な理由ばっかりつけて、逃げていた。
結局は、恥ずかしいだけだったんだ。
改めて言葉にするのが恥ずかしかった。
大人なんて、所詮ただの肩書きで。
歳なんて、重ねるほど臆病になる。
若い時の方が、気持ちをずっと
ストレートに伝えることが出来た。
だけど、その臆病さが智を不安に
させているなら…。
何度でもいうから。
「愛してる。」
智の瞳の淵に、じんわりと
涙が溜まってきて、ぽろっと溢れる。
「俺も…っ。愛してる…。」
智がさっきとは違う、本当の笑顔をくれた。
