
DAYS
第32章 オールリクエストshort story♡
ハンバーグが目の前に運ばれてきた。
熱い鉄板に乗って。
ライスと、サラダと、あと
「お待たせしました。」
この人の、柔らかい笑顔を添えて。
ジュージューと、いかにも美味しそうな
音と匂いが、食欲を掻き立ててくる。
「いただきます。」
箸でスッと切って口へ運ぶと、
「…うまっ。」
これが驚くほど美味かった。
今まで食べてきたハンバーグの
どれよりも美味しかった。
「でしょ?
よかったね、雅紀。」
「喜んでもらえて良かったです。」
照れくさそうに、雅紀の呼ばれるその人は
頭をポリポリと掻いている。
悪い人ではなさそうだけど、
あの人と親しげなところを見ていたら
何だか悶々とする。
そりゃ、店員さん同士だし、
仲が良いのは当たり前。
出逢ったばかりの一客の俺を、
特別視してくれる訳はない。
いろいろモヤモヤするけど、
とにかく今は食べることに専念する。
…うまいな、ホント。
「ふふ…っ。」
カウンターの奥から、ふと笑い声が
聞こえてきた。
何かと思って顔を上げたら、
あの人が笑っていた。
すぐに俺の視線に気が付いたのか、
「あ、ごめんなさい。」
と、急いで謝っている。
「いえ、大丈夫です。」
「すいません。ホント。
お客さんがハンバーグを食べてるの
見たら、つい…。」
また吹き出しそうになっているのか、
両手で口元を覆っている。
「ハンバーグ、好きなんですね。」
「はい。
好き、です。」
「へ!?」
「ハンバーグですよ。」
驚くこの人に、
テキトーに笑って誤魔化しておく。
ずるいのは分かってる。
冗談だと思われたって、
何かしらのアプローチをしたかったんだ。
