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DAYS

第32章 オールリクエストshort story♡






その日の夜10時過ぎ。


智くんは、やっと帰ってきた。

でっかいクーラーボックスと
釣竿をぶら下げて。


「ただいまー。」
「…おかえり。」


大好きな智くんが目の前にいるけど、
気分があまり浮上しない。


結局1日中考え込んで、
日が暮れてしまっていた。

せっかくの久しぶりのオフだったのに、
計画も立てずに家にこもったのは
いつぶりだろう。


1人だとご飯を食べる気にもならなくて、
朝から何も口にしていない。


だけど、そんなのを悟られたくなくて
無理に笑顔を作った。


作ってはみたんだけど、

「翔、どうした?」

智くんはすぐに気が付いたらしい。

だけど、

「ん?何が?」ってとぼければ、
それ以上は聞いてこなかった。


「今日は、大漁?」
「…今日は、って刺があるぞ。刺が。」
「ごめんごめん。」


2人でクスクス笑いながら、
リビングへと入ってく。


ずっとこんなのが続いたらいいのにな。


智くんが居てくれるだけで、
こんなに気持ちが軽くなる。

心も体も温かくなるのに。


「先にシャワー浴びてくる。」
「あ、お風呂入ってるよ。」
「うん。ありがと。」


お風呂場に駆けていく智くん。

智くんが隣を通った時。
海の匂いがほとんどしなかった。


また、だ。

釣りに行ったはずなのに、
その割には薄く香る潮の香り。

これで何度目だろう。


ねぇ、智くん。

本当はどこに行ってるの?


何度も何度も我慢した。耐えてきた。

だけど、今日はどうしてもダメで。


携帯と車のカギだけを持って、
家を飛び出した。

ニノの家を目指して。

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