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「俺は別れたくない。」
「嘘だ…。」
「お前のこと、好きだから。」

「嘘だ…。

同情なんていらない！
散々放ったらかしにしといて、
今更そんなこと言わないでよ…。


俺、翔ちゃんが分かんないよ…。」


叫ぶような声で言うと、
わっと泣き出した。


一瞬、イラッとした。

俺の何が不満なのか。
泣いてたって分かんないって、
俺が叫びたくなった。


でも、


「も、辛いよ…。

俺ばっかりが翔ちゃんのことを
好きなんだよ…。」


そう言って、悲痛な顔をするから。


やっと気が付いた。

俺がどれだけ雅紀を傷つけていたか。
雅紀がどれだけ俺を待っていてくれた。


ここ最近、俺はずっと
帰りを遅くしていた。

意識して、雅紀が起きている時間に
帰らないようにしていた。


バレていないと思ってた。

それなら傷つかないだろうって
思ってた。


それが逆に雅紀を傷つけてた。



「俺のこと、嫌いになったなら
そう言ってくれたらよかったのに…。」


雅紀は、俺のことを責めてるんじゃない。

ただ、苦しかったんだろう。
寂しかったんだろう。


俺はバカだ。

こうやって、無くす直前になるまで
大切なものが分からないんだ。



「…今まで、ありがとう。

荷物はまた取りに来るから…。」


言いたいことは山ほどある。

だけど、あれもこれも
そうじゃなくって…。


「ちょっとこっち来い。」


雅紀の手を掴んで、
寝室へと引っ張った。