
DAYS
第21章 愛を込めて花束を S×N
目に入ってくるものの全てが新しくて。
全部がキラキラしてる。
だけど、それは和のお陰だよね。
太陽でもなくて。
街の景色でもなくて。
和の優しい笑顔が、1番綺麗だ。
「ご飯も食べたし…。
取り合えず戻る?」
「そうだね。もう、日も暮れそうだし。」
「夕日、見たいな。」
和の提案で、また水上コテージに戻る。
その途中、こっそり携帯を見れば
『OKだよ』の文字。
「よし。」
「ん?翔どうしたの?」
「え、あ、いや。何でもない。
それより早く帰ろう。
夕日が見れない。」
和の手を引っ張って、駆け出す。
慌てて俺に着いてくる和の手を、
離さないようにきつく握って。
「着いたぁ、はぁ。」
「結構、走った、ね。っはぁ。」
コテージに着いた時には、
2人とも息切れしてた。
「もうおっさんだよ…。」
「俺はおっさんじゃない。お兄さん。」
「もう無理だって、それ。」
2人ではぁはぁ言ってたら、
何だか可笑しくって笑えてきた。
「ちょっと体力つけようかな…。」
「俺も。」
「あ、それより夕日ー…」
コテージの裏側に回れば、
「わ…。」
思わず息をするのも忘れそうな絶景。
太陽の濃いオレンジが、
辺り全体を染めていく。
海も。空も。雲も。
俺たちも。全部包み込んでいく。
夢と現実を忘れそうな、そんな光景。
だけど、隣を見れば和がいて。
愛しい奥さんがいる。
ここは、夢じゃないって教えてくれる。
繋いだままの手は、いつも暖かい。
完全に沈んでしまうまで、
一言も喋る事が出来なかった。
「…凄い綺麗だったね。」
「…。」
「和?」
ぱっと横を向くと、
静かに涙を流してる和の横顔。
儚くて、だけど強くて。
綺麗で、美しくて
だけど、簡単に壊れてしまいそうで。
触れる事を躊躇うほどだった。
「ねぇ、翔。」
「…ん?」
「俺、幸せだよ。
ありがとう。」
目にいっぱいの涙を溜めたまま、微笑む。
こんなにいい景色でさえ、
和の前ではかすんで見える。
微笑む和の唇に吸い寄せられるように
自分の唇を重ねた。
