
1人じゃなくて。
第3章 No.3
「…俺は、三鷹要(みたかかなめ)。お前は?」
要と名乗った男は、包帯を取り出し少女の瞳を見た。
「あ…私は……………奈瑠(なる)…です。」
「名字は?」
「…………大月(おおつき)…」
手を差し出したまま、奈瑠は下を向いた。
要は、一瞬見せた奈瑠の暗い表情を見なかったことにはしなかった。
「…奈瑠。昨日、俺はお前を見つけた。雨の中1人で倒れそうになっていただろ。………何があった…。」
奈瑠の瞳が揺らいだ。こんな事話していいのか、ましてや初対面の人に。
しかし、要の目はなんの曇りもなく奈瑠の目を見つめた。
まるで…心の中を見透かされているように。
胸の奥がじわっと温かくなった。この人になら話してもいい……だって、目だけで解るくらいこの人の心は澄んでいるから。
まったく知らない娘を、家に上げようものなら、汚れた考えを持つものもいる。
しかし、要は手も出さなかった。
奈瑠が朝早くに起きたにも関わらず、要も起きていたのは…単に早起きだからではない。
「だって……目の下に証拠があるから…」
