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桜並木を見おろして【ARS・O】

第11章 マンション【智】

『小春さん、美大生を追っかけて東京に逃げたらしいよ。』

タケシの言葉がよみがえる。

小春ちゃんと接触があった美大生の中で、卒業後東京に行ったのは俺一人。

東京の食堂で小春ちゃんと偶然再会した時、店には俺の描いたスケッチが飾られていた。

でも、再会しても小春ちゃんは俺に何も言ってこない。

『好きだ』とか『付き合って』とか。

連絡先を交換しても、電話のひとつもかけてこない。

「どうなってんだよ。」

その時、携帯電話が震えた。

着信を確認すると、あの女。

『ご飯作りに行く時、何の料理作ってほしい?』

頼んでないし。

俺は、返信せずに携帯電話を置いた。

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