
誰かお願いつかまえて
第9章 女たちの戦い
――
「幸村、ここでいいのか?」
岡崎さんに頼んで車を停めてもらったのは、先方の隣にあるビルだった。
それも一見普通のビルでスーツなど置いていなさそうなところだ。
「…スーツ、用意しに来たんだよな?」
どう見てもショップには見えないビルを前にして、川端も不思議に思った。
『そう!
すみません!!先に降ります!』
「あっ、おい!」
言った途端に車から降りて入口に向かって走り出す。
入口に立っている女性と何か話してから、波香はビルの中に入って行った。
対称的に入口にいた女性が車に向かってくる。
「……俺達に用か?」
「いや、分かりませんけど……………っ!」
返事をした川端はその女性が近づいてきて悪寒がした。
見たことのある、そして自分の苦手なタイプの女性だったからだ。
コンコン
ノックに応じて岡崎が窓を開けると―――
「ちょっとお話があるからとっとと……お早く車停めてきてくれます?」
顔に似合わないドスの効いた低い声で、2人にそう言い放ったのは冷笑を放った女性―――――
―――柚原 夏海、だった………
