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サバイバルヘルパー

第4章 小梅の本気惚け

 暴れるように、廃屋から借りてきた鍋を並べる。


『テン……テン……テン、テン、テテン、テテン、テテテン、テテテン』


 降りが強くなり、鍋の底の音も激しくなる。


「溢れるほど溜まれぇーっ!!」


 空に向かって大声で叫ぶ。


 海水ではない、真水である。シャワーのように浴び、全身で受け止める。


「あ、やべ」


 あわててバッグを木の下まで持ってきた。


「中にマッチが入ってっからな。濡れたら大変だ」


 大降りの雨で、空気は冷え、涼しい風が木々の間を通りすぎる。


「雨風がしのげる場所がほしいなぁ……腹も減ったし……」



 井戸に白骨がある、あの家だけはさけたい。


「てか、本当に無人島なのか? なんか、逃げてきた殺人犯とかいるんじゃねぇだろうなぁ……」


 そんなことを呟きながら、辺りを見る。


 また小梅がいない。


「マジか……こんな雨の中、どこ歩いてんだろうなぁ」


 何度注意しても言うことを聞かない。


「なんで、足も悪いのに動きまわるんだろうなぁ……」


 俊輔にとって、お年寄りはいたわる存在。いつの間にか、いたぶられている気がした。



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