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サバイバルヘルパー

第4章 小梅の本気惚け

 小梅はとぼとぼと、俊輔の後ろにくる。目に見えるところに立てば、怒られると思ったのだろう。


「ごめんなさいね、ごめんなさいね」


 俊輔の後ろから、低く落ち込んだ物腰で謝りを告げる。


 これは正気だったのだろうか?


 俊輔は黙ってうつむいていた。


 小梅はそれ以上は、なにも言わなかった。


 俊輔は悔やみに悔やみきれない感情が溢れ、なにもする気がしなかった。


 助かるには自分が動かなければならない。だが、動けば、今のような最大のチャンスを逃すことになる。


 今の小梅に、そう言い聞かせる事は出来るのか?


 その場に大人しくしろと言っても、勝手に廃屋まで来ているのだ。


 だからと言って、くくりつけるわけにもいかない。


 いっそのこと、泳いで向こうまで渡ろうか?


 そんなことも考えた。


 それほど泳げないのに……。


「おい、こら婆さんっ!!」


 呼び捨てるように言って、振り向いた。


 だが、そこに小梅はいなかった。


 探す気もなかった。


「好きにしろ! 知るかっ!!」



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