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サバイバルヘルパー

第9章 いかだ

 発電機の隅に、なにかが落ちている。


「これは?」


 俊輔は手を伸ばす。


「おっ!!」


 拾い上げるとそれは、100円ライターだった。


「やったね、これは使える……て、遅いわっ!! 俺どんだけ頑張ったと思ってんだ!!」


 苦労して火をおこしたのは、なんだったんだ。ここに、こんないいものが落ちているなんて、思いもしなかった。


 俊輔は外に出た。


 室内が煙で充満してきたからだ。


「やっぱ、室内で薪燃やして持ってたらヤバいな」 


 それだけではない。時折、薪を傾けて持っていたため、手の部分まで火が燃え広がった。


 せっかく苦労して、つけた火を消したくは無かったが、仕方がない。


 俊輔は厨房にある、薪風呂の窯のフタを開けた。


 その中に火のついた薪を入れた。


「ついでに沸かしたれ」


 さらに数本の薪をくべる。


 ライターの火をつけて、浴場に移動した。


「あれ? 少し明るい」


 風呂の窓から月が見える。その明かりが浴場の中を照らしていた。


「電気ほどではないが、まあ、見えるからいいか」


 即席の風呂栓を抜いて、水を流す。


 洗面器で熱いお湯をすくい、湯船にかける。


「一応、汚れは落とさないとな」


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