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サバイバルヘルパー

第9章 いかだ

 続けるうちに、手が熱くなってくる。


 額から汗がにじむ。ここは温泉旅館だった場所。


 温泉が絶えず湧いているため、地熱がある分、いつもの浜よりも暑い。


 箸を回してこすり続けること30分。


 俊輔の顔が、疲労で歪む。


「なんだよ……箸じゃ無理か? そんな都合のいい木の棒なんて、他に無いぞ」


 俊輔は菜箸を両手の平にはさんだ。


 もう少し頑張ろう。これでダメなら諦めよう。


 真っ暗な中、微かな影を頼りに、再びチャレンジ。


「ここが釘の穴だな。よし……」


 上から押し付けるように、箸を手でこすって回し、摩擦で熱を起こす。


 徐々にスピードを上げる。なぜ、火を起こしてるのか、わからなくなるくらいに必死にこする。


「んっ!?」


 なにか、小さな赤いものが一瞬見えた。


 俊輔はこすり続ける。


 気のせいじゃない。


 赤いものは存在した。チカチカとしている。


 俊輔はポケットのゴマを足した。


 チリチリと赤みが増えてくる。


「よし!!」


 ほぐした枯れ草に、火種を入れ、消えない程度に空気を吹き込む。



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