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サバイバルヘルパー

第9章 いかだ

 松ヤニだ。


 さわれば、小指の先ほどの塊が手についた。


「上等。なんとかできるかも?」


 俊輔が集めたのは、菜箸、薪、板、松ヤニ、枯れ草の五点。


 廃屋である旅館の端には、ボロボロになった板が山ほどある。


 その中でも、釘が刺さっているものがあった。


 俊輔は釘を手で引き抜き、抜いて出来た穴に炭の粉を入れた。


 そして、ジーンズのポケットに手を入れた。


 なにも入っていないポケットの奥を、ゴソゴソと探る。


 手を抜くと、俊輔は「よし」とうなずいた。


 取り出したのは、少量の糸ぼこりのくずだ。


 ポケットの底の隅に、よく、綿のような塊のゴミが入っていることがある。


 それをかき集めていた。


 板を足で踏んで固定し、釘の穴にポケットのゴミを押し込む。


 そこに菜箸を立てる。


 両手で箸を挟み、前後でしごきながら摩擦をおこす。


 火を起こす、古典的方法だ。


 だが、すぐに疲れる。


「なんの、これしき」


 とにかく続ける。


 休めば、せっかくの摩擦熱が冷めてしまう。



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