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未知夢

第8章 時間

 すでにスタミナも消耗し、フラフラだった。だが、たとえ一歩ずつでも足は進めたい。早く、あの女性の元に行きたかった。


 やっとの思いで女性がいるマンションにたどり着いた。


「ハァ、ハァ、クッソォーーッ待ってろ!!」


 繁がマンションの入り口から入ろうとした時だった。




『ドスッ!!』




 何かが落ちる様な音がした。


 サーッと血の気が下がる。


「ま……まさか……嘘だろ」


 繁はそっと後ろを振り向いた。


「くっ!!」


 背中に冷たい物が走り、息が詰まる思いがした。


 そこには、地面に仰向けになって倒れる女性の姿があった。


 その女性、やはり高円寺綾だった。


 ショックではあったが、なぜか普通にその状況を飲み込めた。問題は屋上で揉めていた男だ。


 当時のニュースでは、自殺ではなく、落とされた可能性があるとも報じられた。



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