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未知夢

第8章 時間

 これが現実ならば、一刻も早く、あの建物に行かなければならない。


 あそこで立っていた女性。


 間違いない。


 10年ほど前に自ら命を絶った女性アイドル『高円寺綾』だ。


 いや、似ている人かも知れない。


 間違いなければ、あの建物は彼女が自殺したマンション。


 うちの近所だ。


 まさか、そんな前にタイムスリップしているとは、正直考えられなかった。


 だが、あの光景に血の気が引くような感覚が過ぎったことには間違いない。


「急ごう……」


 繁は走る。だが現在、極度な運動不足なため、かなり息切れが激しい。


 サッカーをやってた頃とは訳が違う。


 足がもつれだした。


 だが、止まる訳にはいかない。


「頼む……間に合え……間に合ってくれ!!」


 ビルの入り口から飛び出した繁は一度振り向いた。



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