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未知夢

第16章 変貌

 やがて、綾子の胸を押す手も緩くなる。


 パニックになりながら力任せに押し続けたのだろう。


 綾子の胸に、繁の手形がクッキリと残っていた。


「ああぁーー!! 死んだ……死んじゃった……ああぁーー」


 激しく泣き叫ぶ。涙の滴が冷たくなった綾子の顔を濡らす。


 様々な出来事が頭を過った。その都度、感情が高ぶり涙が溢れ出る。


 この手で殺した?


 本当に殺したのか?


 いや、間違いない。きっと自分がやった。


 何もわからない。何も考えられない。


 ただ泣き叫ぶ。今の繁にはそれしかできなかった。冷静になれない事が続いたためか、救急車を呼ぶという、冷静な判断も失っていた。




 どれだけ時間が経ったのか?


 綾子の体には、下着とTシャツが着せられていた。


 必ずここに警察が来る。裸では気の毒だという繁の僅かな心使い。


 涙は流していなかった。


 繁はただ、うつ向いて、綾子をジッと見つめていた。


〔殺したんだよ〕


 心の声が響く。




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