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未知夢

第12章 好機

 繁は心の声に返事はしなかった。


 今の滝繁は、ついさっきまでの滝繁ではない。


 憧れだった高円寺綾を目の当たりにし、一度はテンションは上がったものの、なんの因果か、森屋との性交が発覚したと分かった時、自分の中で不必要な存在と化した。


 ショックと敗北感に引きずられ、消えて無くなってほしいと思った。


 ただの自分勝手な思考、何も行動出来ない弱者。


 高円寺綾は、被害者。森屋の手によって地位を落とされた弱者。


 やつは、自分の欲しいものは無理矢理手に入れる男。


 思い出した。


 あれは高校のサッカー部で2チームに分かれての練習試合だった。


 やつはゴール手前で、ボールを蹴るつもりが傍にいた俺の足首を狙って蹴った。バランスを崩した俺は足首を負傷し、地区大会のレギュラーから外された。


 その代わりに入ったのが……



 森屋隆弘




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