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未知夢

第12章 好機

「この仕事もやっていけない……」


「落ち着け!! 綾子!!」


 隆夫は繁を見た。


「頼む……助けてくれ」


 繁は冷ややかな目で、その光景を見ていた。


 隆夫の訴えを無視するかの様に目を反らすと、頭の中で声が響く。


〔どうした? お前が望んでた女と、生きて出会えただろ?〕


 心の声だ。


「これはなんの力だ? 石か?」


 繁は小声で、心に聞いた。


〔両方だ。未知夢で石を掴んでいなければ、いくら女体を手に入れたとしても死んだ女には会えない。この赤い石は夢ではなく過去に戻ることが出来る。だが、あまり薦められないがな〕


「あの女、もし助けたらどうなる?」


〔一度決まった未来は変えられない。しかも、その時起きた過去も変えられない〕


「え? なんだよそれ」


〔つまり、あの高円寺綾が飛び降りた日、実際にお前がいたんだ〕


「!!」


 衝撃だった。


 今、起こっていることはすべて当時に一度起こっていた。



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