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未知夢

第12章 好機

 繁は正直、もうどうでもよかった。隆夫を行かせようとしたのは、渡した金に諦めをつけるため。ただ、それだけだ。


 当時、愛し憧れてやまない、高円寺綾と言うアイドルタレントは繁にとって、ただの汚れたカス女としか見えてなかった。


 まだ、桜石洋との間の子供であれば、まだ諦めはついた。だが、相手が森屋隆弘ならばこれほど腹立たしいことはない。


 さっさと自分の目の前から金が消えて、最後は高円寺綾にバイバイして帰ろうと思った。


 今となればやや下心で金を渡したが……その後悔もあった。


 なんであんな下のだらしないアイドルを助けるために、金を渡したんだろう。この状況じゃ、やっぱり返せなんて言えない。


 すべてはあいつのせいだ。


 森屋隆弘


 俺から全てを奪いやがった男。


 実際、森屋は繁のモノは何一つ奪ってはいない。


 ただ、そこは繁の思い込みである。



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