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未知夢

第12章 好機

「あの、どうかしたんですか? 森屋くんの事、ご存知なんですか?」


 綾子に尋ねられても返事をしたくなかった。


 この女の腹には憎いあいつのガキがいる。沸々と怒りが込み上げる。


 やつは自分をバカにしていたのだ。自分が沖野由佳里や高円寺綾が好きなのを知っていた。


 高校時代に、厳しくしごかれたことを根に持っていたにちがいない。


「森屋は……森屋は……やつが高校3年のころの私の教え子だ」と、嘘を言った。


 今の自分は34歳。時代を考えて言えば妥当な嘘だと思った。


「先生……なんですか?」


 本当は違う。


 やつはひとつ年下の後輩だが、大学ではひとつ先輩。


 さっきまで好きだった高円寺綾の顔も見たくない。


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