
凍夜
第5章 渇望
車は、南九条通りをススキノ方向に走り、地下鉄南北線中島公園駅出入口の辺りで信号にひっかかり停車した。
私はCOOLに火をつけると窓の外を眺めた。
キャリーケースを引いた観光客らしい人々が、季節外れの薄着姿で身を縮め歩いている。
《何もこんな日にね……。》
「寒そうね……。イヤね。」
私は窓を開け、煙を吐き出した。
「風邪引かないでくださいよ。社長。」
信号が、青に変わり土屋は、アクセルを踏んだ。
《今夜は、早く帰りたい……。》
私はススキノ東急Reyホテルの前で車を降りた。
土屋のクラウンが、南4条通りを西へと去りゆく。
路面電車が終点ススキノ停留所へゆっくりと入っていった。
私は東急Reyホテルの正面エントランスをくぐりロビーに足を踏み入れた。
時刻は21時をまわっていた。
私は、ロビーの中を一瞥してから携帯を覗きこみアルバムの中に映る1人の男を、また顔を上げて探した。
直ぐにその男はみつかった。
