
凍夜
第5章 渇望
「服を着替えたいの。私のマンションで降ろして。」
時刻はもうすぐ20時半だった。
車は、市電西線を南に向かっていた。
路面電車が雪を掻き分けるようにすれ違っていった。
「何処へ行く?送るよ。」
マサシが淋しそうな声で言った。
「アシはあるの。大丈夫。マサシは、早く休んで。」
私は頭の中で何を着て行くかを考えていた。
私の口調がキッパリしていたのでマサシは、黙って頷いた。
線路沿いにある私のマンションで、車を降りた。
マサシの車が、線路を渡りUターンしてゆく時、マサシが私の方を見てクラクションを鳴らし手を挙げた。
私も同じく手を挙げてマサシを見送った。
私は急いでエレベーターに乗り込み10Fのボタンを押した。
そこで直ぐに携帯が鳴った。
着信は、マサシからだった。
「マサシ?どうしたの?」
私は忘れ物でもしたかとバックの中を覗いた。
「リナ、どんなに遅くなってもいい、電話待ってる。」
