
凍夜
第5章 渇望
また、雪が強く降り始めた。
車は、中央区に入っていた。
《何もこんな日にね……。》
ユキが狂ったように笑う姿が、脳裏をかすめて消えた。
まるで、随分前から、私とマサシの事を知っていて、私達を責めてるような気がしてきた。
確かに、昨夜の私とマサシは間違いを起こしたのかもしれない。
ユキへの冒涜と思える行為をしたのは紛れもなく事実だった。
「リナ、俺のこと軽蔑してない?」
察したかのようにマサシが口を開いた。
私は黙って首を振った。
私のコートの衿からマサシのエタニティフォーメンが微かに香った。
私はその香りを味わった。
暖かいものが胸の中に迫ってくるようだった。
でも、そんな自分を自分が一番許し難いと思っていた。
《偽善者……!》
私は、拳を握りしめた。
《わかってる、そんなこと……。》
