
凍夜
第3章 花
その夜、通夜の席で喪服姿のマサシを見た。
マサシは、無表情で涙を見せることもなくみじろきすらせず座っていた。
私はアリサさんの遺影を見上げた。
《死神レイジと出逢わなければ、こんな死に方をしなくてすんだかもしれないのに。アリサさんにとっての人生って幸せだった……?》
見渡す限り、レイジらしい男の姿はなかった。
《きっと、レイジは、笑っている。こんな夜でも誰かの唇を吸って、甘い言葉を吐いている。》
そんな、男に、会ってみたい。
やはり私は、そう思っていた。
葬列の黒い道を、雨は容赦なく降り続け、透明の傘が哀しみに揺れていた。
