
凍夜
第3章 花
~車は北8条通りに入っていた。
「マサシごめん。私、余計なこと言ったね。」
私はCOOLを揉み消すと一言詫びた。
本当は言ってはいけないことだと知らず、自分だけが何でも知っているような言葉を吐いてしまった。
私は自分に腹立たしさを覚えていた。
マサシの心情を思うとやりきれない思いを抱いた。
これ以上、マサシに何を言えるだろう?
《ひょっとしたら、マサシは全てを見通してるのかもしれない……!》
私は顔を上げてマサシの横顔を見た。
信号が赤になり、マサシはブレーキを踏んだ。
タイヤが凍った路面を削る音が鈍く響いた。
マサシは足元に転がったトカップの瓶を拾うと、喉が乾いていたのか一気に飲み干した。
そして、私の目を覗きこむと、「謝らないで、リナ。俺のこと信じて。」と優しい瞳で微笑んだ。
