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conqueror

第1章 初日

「えっ、あぁ、こ、このまま、帰る、の?」

ローターの振動のせいで、途切れ途切れになりながら、彼に聞き返した。

「そうだよ。そのままでね。家に帰ったら、電話して。それまで、止めたり、外したりしたらダメだよ。」

彼は、ぞくっとするくらい、優しい声で言った。

このままだなんて。

私は、家までの道程を思い浮かべた。

今、この瞬間でさえ、体が震えているのに。

「それじゃ、ぼくはもう行かないと。」

彼は仕事中に、私と会ってくれているので、いつまでもグズグズしている訳にはいかない。

私はカバンを持って、車から降りた。

彼は私の方をチラッと見て、微笑みながら、車を発進させた。

私は改札口の方へ向かって歩き始めた。

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