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【S】―エス―01

第36章 決行

 指し示した部分の蔦(つた)を掻き分けると、そこだけ塞ぎ忘れたのかはたまた誘導か、地下へ続く経路がぽっかりと口を開けていた。


 暗い階段の奥からは、地下独特のひんやりと湿った空気が漂い肌を撫でる。


 どちらにしろ、進む以外に手はない。


 ここからは互いの携帯で連絡を取り合うこととなった。


 はっきりとは窺えないが見通しの悪さから、どうやら明かりはないらしい。懐中電灯を手に地下へと続く階段を下り侵入を試みる。


 入り口から階段を下り、しばらく進んだところで通路は左右に分岐していた。足元の水を跳ね立ち止まる。


「分岐点か……」


 左右に分岐した通路を前に、刹那が2手に分かれることを提案する。


「気をつけて。たぶん、咲羅は……僕らより強い」


 分かっているとばかりに大きくひとつ頷く。そして茜を引き連れ、右の通路へ曲がり駆け出そうとしたその時、


「瞬矢! ……兄さん」


 珍しく名前で呼び止められ振り返ると、


「2年前、兄さんが僕を助けたいって言った気持ち……今なら、なんとなくだけど分かるような気がするよ」
 

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