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【S】―エス―01

第36章 決行

 そしてすぐ傍にまで歩み寄り、訊いてきた。


「ああ、こっちも駄目だった」


 ぐるりと辺りを見渡し、瞬矢たちは、そこでようやく茜の姿が見えないことに気づく。


「そういや、茜は?」


「捜そう!」


 瞬矢はポケットから携帯を取り出す。急遽、見失った茜の姿を求めて城の周囲を捜索する。


 携帯からは断続的な呼び出し音の後、すぐさま彼女の声が聞こえてきた。


「おい、茜。お前どこにいるんだ?」


『あっ、瞬矢? あのね――』


 雑音混じりに聞こえてきた声の宣うところ、どうやらこの城の裏側にいるらしい。


 城の裏側は森になっている。そこには削り取られた崖が聳え、彼女はその切り立った岸壁の辺りにいるとのこと。


 瞬矢たちは、ひとまず茜の言う岸壁のある場所へと向かった。


 生い茂る草木の合間を分け入り、遠くにぽつりと茜の姿を確認できた。


「こっち!」


 2人に気づいた茜は声を上げて左手で手招きし、もう片方の手で蔦(つた)に覆われた岸壁を指し示す。安堵に胸を撫で下ろしながらも側へ駆け寄る。
 

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