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【S】―エス―01

第24章 兄弟

 
「刹那……」


 『僕たち』の意味するもの。それはやはり、刹那自身を含めた秘密を知る者を消し去ること。


 そしてその目的は今、無差別に広がろうとしている。


 ずっと兄弟だと思ってきた。真実を聞かされても、やはり刹那は瞬矢にとってたった1人の弟なのである。


「――誰も、消させない!」


 瞬矢の中にある強い想いが、纏っている粒子の光を一層眩(まばゆ)いものにした。髪や衣服は青を反映させて棚引き、水色の瞳はより輝きを放つ。


「本気なんだ。嬉しいよ」


 淡々とした口調で薄ら笑みを浮かべた刹那もまた、光の粒子を纏い瞬矢を見据える。


 だが不思議なことに、両者共にその目は生き生きとしていた。


「言っとくけど、引き分けなんて期待しないでね?」


 自らが纏っている衣服、そして髪を棚引かせ刹那は言った。


 双方の力は臨界にまで達し、膨大なエネルギーを帯びた光の粒の集合体である空気がびりびりと競り合う。


「フンッ、当たり前だ!」


 吐き捨てるかのようにそう言い、顔の前に翳していた右手を払う。
 

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