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第2章 Episode 2 痛み



一言も会話を交わすことなく、2人は鈴の自宅に辿り着いた。

「……送ってくれておおきにな」

こちらへと振り向いた鈴の目は、赤く腫れていた。

「なあクロちゃん……」

光が消え失せ、ただ絶望と悲しみだけが渦巻いている瞳で黒斗を見つめる。

「……ウチ、大げさなんかな…ペットが死んだくらいで悲しみすぎやよな……?」

空色の綺麗な瞳が揺れ、また涙が零れ落ちる。

「でもな…笑うかもしれへんけどな………ウチにとって、リンは本当に特別な存在やったんや…大切な……家族やったんや……!」

涙が頬を伝い、それがポタポタと地面に吸い込まれていく。


「ハハッ……やっぱウチって、おかしいかなあ……」
自嘲気味に笑う鈴の瞳を、真っ直ぐ見つめながら黒斗は口を開いた。

「お前の言うことを笑いながら嘲(あざけ)る者もいれば、同調して一緒に涙を流す者もいるだろう。おかしいか、おかしくないかは人によって変わる」

黙ったまま鈴は黒斗の言葉を待つ。

「……俺はペットの死を悼み、心から涙を流せるお前は純粋で、優しすぎると思う」

「………………」
何も言わず、立ち尽くしたままの鈴に背を向けて、黒斗はその場を立ち去った。


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